おうちカフェインテリアに流木はいかが?~流木物語~
流木って美しいです。
地球が生み出した大きな木が、大河や大海原を流れ流れ、たくさんの時間を旅してきています。
そして、ようやく大地へとたどり着いてからは、旅の途中でたくさん含んできた水分を、大地の上を流れ行く風が乾燥させながら、風化し歴史をより濃く刻んでいる。
流木を見ているだけで、色々な考えや、物語が次々と頭のなかをよぎり、物思いにふけられる。
そんな魅力がある流木。
その流木がおうちにあるだけで、自分以外の歴史を感じさせる大きな存在となります。
わたしの流木物語
わたしが流木テーブルを使っていて、その流木を見ながら思いにふけた物語を少々書きます。
流木はどこからきたのでしょうか
台風やハリケーンが大木をなぎ倒し、大地から引き剥がされたその大木が川へと放り出され、終わりの無い旅が始まります。
雨が降り、地表が潤い、地下へと染みこみ、浄化されながら山から湧きだした水が、小さな川を作り、徐々に徐々に大きな川へと姿を変えていく。
そこを大木が旅をしていきます。
最初こそ大木であったかもしないその木々は、川の旅の途中に岩や石、小石など固くて様々な障害があり、それらにぶつかり、枝が折れたりと、時々刻々と姿を変えていく。
さらに、その障害は続き、木々の表面は削り取られ、なめらかな姿へと変えていく。
まるで人間が生まれてから、様々な経験を経て成長していくかのように。
もしかしたら川の旅の途中で、運が良いのか悪いのか地上へと乗りあげてしまうものもある。
しかし、そのまま障害を乗り越えた先には、川から大海原へと、新たな旅が始まってしまう流木たちがいます。
海では障害物は少なくなるでしょう。
しかし、さらに終わりが見えない。途方にくれているかもしれませんが抗うこともできない。まさに、流れに身を任せる。
何分も、
何時間も、
何日も、
何ヶ月も、
何年も、
何十年も、
何百年も、
旅をせざるを得ない流木たちもいるでしょう。
そして、運悪く途中で、深海へと誘われる者たちもいるでしょう。
人間が創りだした船にぶつかり、さらにばらけてしまう木々の身体。
ようやく、それはどれくらい経ったかもわからない旅が終わりを迎えるものがでてくる。
大地に辿り着いてからも、時間という旅が続く
過酷な時間が、水とともに流れてきて、ようやく安堵の地へとたどり着いた、木々。
しかし、その新たな地では何が待ち受けているのか。
環境によって様々なことが巻き起こる。
極寒の地へと辿り着いたものは、凍てつく寒さの中、水分を含んだ身体が凍り出す。一日の寒暖の差があれば、凍っては溶けて、溶けては凍ってと、落ち着く暇のない日々。
しかし、それも悪くはない。
澄み切った空気を感じられ、夜にはオーロラが神秘的に現れる。大空の巨大なスクリーンに映し出されるそのオーロラを毎日毎日みながら、旅の途中の辛く険しい日々の出来事も、今となっては良い経験・思い出だなと回想できるのだから、と。
かたや暑さが厳しい地へと辿り着いたものはというと、今まで水の柔らかさを身体中で感じていて、心地よかったかもしれない。しかし、暑さはその潤った身体の水分を徐々に奪い取り、干上がっていく感覚。乾燥との戦いが始まる。
最初は少し気持ちがいい。久々の大地で感じる風は、その水の中で感じる風とはまた違った。表面を駆け抜ける風は何年ぶりだろうか。しかし、そこは暑さが厳しい。その気持ちいい風が、辛さへと変わっていく。身体の心まで染み渡っていた水分さえも奪い取り、いまでは乾燥しきってしまった。
しかし、暑さが厳しいこの環境も、寒さが厳しい環境と同じで、決して悪いことばかりではない。
雲ひとつ無い晴天、青く晴れ渡る空を、まっすぐ見上げると、小さな影のように見える鳥。自分もまた、鳥のように自由をようやく手にしたのだと感じられた。
孤独
辿り着いてからどれくらい経ったのだろうか。次にたどり着く仲間の姿はまったく見えなかった。辺りを見回しても自分だけ。
寂しさというより、孤独感だけが、夜になると更に襲ってくる。
太陽が出ている時は、たまに動物たちが自分の身体で、休憩をしてくれる。運良く、身体の表面が滑らかになっているため、居心地が良いのだろう。
昼寝をするものもいるので、その時はそっとしておいて自分も昼寝をすることにしている。
この時は、孤独は感じづらいのだが、やはり日々の孤独が深く根付いてしまっている。一瞬その孤独の怖さを思い出してしまうと、今の安堵の時間をも覆い尽くすかのように、奪い取られてしまう。
しかし、わたしは流木だった。
流木になってしまっただけであって、そもそも木である。
木という、自分のアイデンティティとでもいうのだろうか、本来の状態に戻った今、流木だった頃の事を思い出すと、動かされているということが少し幸せだったかもしれない。
ここまで旅を出来る、仲間たちはそうそう居ないのだから。
そう考えていると、孤独も少しは和らいでいった。
期待と希望
孤独すら仲間として、孤独とも距離が近くなっていったある日、海の方をそっと見渡してみた。
すると、なにやら小さな影が見える。
今までも、海上の遠くに見える小さな影はたくさん見てきた。それらはたいてい船であったり、波のうねりが作り出すもの、鳥たちがプカプカと浮かんでいるものだったので、今回も期待はせずに、また自分の世界へと戻ろうとしていた。
しかし、今回の小さな影は今までの経験からして違うと感じた。
船であれば、その後大きくなってこちらへと向かってきたり、さらに遠くへと移動しているのだろう、すぐにその姿を消していた。そのスピードは、今まで流れ流されてきたあの波のものではないとすぐにわかる。自分が散々と身体で感じていたあの流れの速度とはまったく違うものだ。
そして、鳥であればその小さな影は、海から空へと移動を始めたりもする。
波もすぐにその小さな影を、自ら飲み込む。
やはり、違う。わたしの様に、自ら動くことのできない何かのようだった。
期待は持たないと決心していたにもかかわらず、小さな期待がわたしの中で生まれてしまった。でも、ここに辿り着いてから自分を抑えこんできた時間が長かったから、今回は自分を許すことにしてみる。過度には期待せずに。
ここまで自分を制することができるよになったのも、やはりあの台風の一件から、流木としての経験が大きい。
そんな風に自分をコントロールしながら、鳥がまた一匹自分の滑らかな身体を気に入ってくれて、昼寝をしているのを見ながら、今日は一緒に昼寝をしないで、遠くに見えるあの小さな影を見ていた。
期待していいと、自分を許したあの時から、半日くらい経った。太陽が美しい夕焼けを水面に反射させながら沈んでいく。
そうなると影が見えづらくなる頃だ。
次に期待するのは、月。
今日は確か満月になる。
よかった、自分は運が良い。
新月だったら、諦めて明日の朝の楽しみとしてゆっくりと眠りについていただろう。
しかし、今日は違う。睡魔が襲ってきている。
いつもなら、鳥と一緒に昼寝をしているから、まだ眠くはない時間。
しかし、期待と希望がわたしを昼寝させなかったのだから。
だからこそ、今日はあえて頑張って目を見開いて、あの小さな影に期待と希望を見いだし続ける決心をしている。
やはり徐々にではあるが、こちらの大地へと向かってきている。
その小さな影が徐々に大きくなってきているのが分かる。
完全に太陽は沈み、辺りを闇が包み込む。満月のスッとした一直線の光だけが水面に反射しこっちに一本の光の道を作ってくれている。その満月の道をちょうどその影が通っている。
期待が膨らんでいた。
どんどん膨らんでいた。
そして、わたしはいつの間にかその期待を抱え込みながらも、遂に眠りについてしまっていた。
気がついた時には、太陽が地球を一周してきていた。
あの自分を許した時の夕日が、朝日になって、また新たな一日をはじめていた。
ハッとして、わたしはすぐにあの期待を込めた小さな影を、月の道があった方向に目を向けた。
涙がこみあげてきた。
ほっとしたこの感覚はいつぶりだろうか。
その小さな影は、確かにわたしと同じ、木であるのが分かるようになっていた。
それだけ、こちらとの距離がなくなっていたのだ。
あの距離だと、あと1時間もすれば到着だ。しかも、このまま流れてくれば、わたしの横くらいにはつけるような位置にいる。
なんてわたしは幸せなのだろうと思いつつも、自分が経験してきたあの流木の頃の思い出を、その1時間の間に整理することにした。
出会い
今までの1時間とは全く違う1時間、あっという間に過ぎた。久しぶりに焦りを感じるほどに。
そして、
遂に、
着いた。
その瞬間から、本当の孤独から開放されたのだった。
そして、今
あの時は本当に嬉しかった。
そして、今も同じように嬉しい。
わたしはその後、流木のテーブルとして、第三の人生(木生)として過ごしている。
わたしの上には、良い香りのするコーヒー、美味しそうな料理やスイーツを置いてくれている。
時には、たくさんの人々がわたしを囲み、楽しそうに会話をしながら、一緒に素敵な時間を共有している。
あの時、わたしの横に流れ着いてくれた、彼もまた同じように、テーブルとして第三の人生を歩んでいる。場所は違えど、彼も幸せな時間を過ごしているに違いない。
そう思いたい。
そう思わせてほしい。
だって、
流木ってさ、
すごくつらくて、
すごく孤独な存在だから。
という物語を想像してました
下手っぴな文章に最後までお付き合い頂き、ありがとうございます(照;;)
長すぎるよ!というツッコミもたくさんあると思います。
でも、こんな風に、流木ひとつで、流木の人生(木生)ともいえるものを想像しながら、あなたもおうちカフェを楽しんでほしいなぁと。
後書きの文章はもちろん、照れ隠しです(笑)
では、また気が向いたらおうちカフェストーリーを書きますねー。
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